【寄稿】「16歳のこどもに対する『特別永住者証明書』の更新義務違反による刑事罰の適用はなくなることに」

 昨年6月より、16歳のこどもに対する「特別永住者証明書」の更新義務違反による刑事罰の適用はなくなることになりました

 これについて、在日本朝鮮人人権協会の金東鶴事務局長に寄稿していただきました。

(下記の文章は「京都同胞生活相談センター情報誌vol.14」に掲載されたものです。)

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 2023年6月、入管特例法(正式名称は「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」)が改定され、16歳のこどもに対する「特別永住者証明書」の更新義務違反による刑事罰の適用は施行日となる11月1日よりなくなることとなった。

 また入管法(正式名称は「出入国管理及び難民認定法」)も改定され、特別永住者に対するものと同様に、16歳のこどもに対する「在留カード」の更新義務違反による刑事罰の適用も同日よりなくなることとなった。 これは、外国人登録法が廃止され、入管法並びに入管特例法が改定された2012年7月9日施行の制度改定の折、法務省の法整備における過失により、次の法務省入国管理局(現、出入国在留管理庁)作成の文書の引用部にあるように16歳のこどもが従来よりもさらに刑事罰適用の危険にさらされることとなったことに対し、その是正を求めてきた私たちの11年間の取組の結果として得られたものである。

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「中長期在留者の在留管理制度等の施行状況に係る検証結果について」(2018年5月 法務省入国管理局)

【ア 意見・要望  一六歳未満の者に交付される在留カード及び特別永住者証明書の有効期 間満了日は「一六歳の誕生日」とされているところ、一六歳の誕生日を迎えるまでは、同居する父母等に有効期間更新申請を行う申請代理義務があるが、一六歳の誕生日までに同居する父母等が同申請を行わなかった場合は、父母等の申請代理義務が消滅し、本人に申請義務が生じることとなる。しかし、本人が申請できるのは、当該一六歳の誕生日一日限りとなり、誕生日までに申請を行わなかったときは、本人が刑事罰を問われることとなるため、一六歳未満の者に交付する在留カード等の有効期間の満了日を見直してほしい(関係団体)。

イ 意見・要望に対する検討  一六歳の誕生日を迎える者の在留カード等の有効期間更新申請については、見直しに向けた検討をする必要がある。】

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<以前の在留更新手続きの流れ>

 この度の改定では、16歳の誕生日当日ではなく、その”前日”までを更新期間とした。

 これにより、16歳未満の場合は、従来より本人ではなく同居する父母等が更新義務者となっていることから、16歳を迎えるにあたっての更新においては、当事者本人に更新義務が課せられる余地がなくなるのだ。

 うっかり忘れでも起き得る更新義務違反に対しては「1年以下の懲役または20万円以下の罰金」という刑事罰が設けられており、これがこれまでは、こどもにまで適用され得るという状態にあった。これは日本が批准しているこどもの権利条約や、今年4月に施行されたこども基本法の求めるこどもの「最善の利益」、そして差別禁止原則にも反していたことは言うまでもない。 難民関連規定など、むしろ改正ではなく改悪との非難にさらされている入管法改定にかこつけて、どさくさに改定した点、また入管当局が見直しの必要性を公式に認めた2018年から数えても5年も経過した点、さらにその後の更新期における期限超過や住居地変更義務違反などに対しては依然として刑事罰が適用される点など、問題点を挙げればきりがないが、この16歳更新問題については、遂に改善措置をとらせたこととなる。入管当局は更なる改正を進めるべきである。

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